
浮気やモラハラで傷つけてきた夫をどうすれば赦して、どうすればまた信じられるのか。
これは夫婦関係修復カウンセリングのクライアントさんからいただいた切実な質問です。
この記事では、聖書の物語から学ぶ赦しの本質と、信頼関係を一歩ずつ回復していくための具体的なステップを3つの点からお伝えします。
傷ついた心をどのように癒し、どのようにして新しい関係を築いていけるのか、その答えが一緒に考えていきたいと思います。
目次
- 赦しの本質を知る|聖書が教える希望の物語
- 姦淫の現場でとらえられた女の物語
- 物語の背景
- 赦しとは何か
- 罪を軽く見ることではない
- 裁かないという選択
- 新しい人生への期待
- 段階的な赦しのプロセス
- 第一段階:現実を受け入れる
- 第二段階:怒りを手放す
- 第三段階:相手を一人の人間として見つめる
- 第四段階:未来への希望を持つ
- 信頼回復への現実的なステップ
- 赦すことと信じることは別のプロセス
- 夫に求められること
- 心からの謝罪と責任の受け入れ
- 具体的な行動の変化
- 透明性を高める
- 継続的な努力
- あなた自身が踏んでいくステップ
- 感情を整理する時間を持つ
- 責任の所在を明確にする
- サポートを得る
- 小さな変化を認識して評価する
- イエス・キリストの赦しと癒しの物語が教えていること
- どんな人でも変わることができる
- 赦すことは自由をもたらす
- 愛と赦しと恵みは人を変える力がある
- 実践的なアドバイス
- 赦しは毎日の選択
- 信頼回復には時間がかかる
- サポートを見つける
- 夫婦で一緒に努力する意思を確認する
- 希望を持って歩む
赦しの本質を知る|聖書が教える希望の物語
赦しとは何かを考えるために、新約聖書ヨハネの福音書8章の物語から見ていきます。
姦淫の現場でとらえられた女の物語
新約聖書ヨハネの福音書8章1節から11節には、次のように記されています。
イエスはオリーブ山に行かれた。
そして朝早く、イエスは再び宮に入られた。人々はみな、みもとに寄って来た。イエスは腰を下ろして、彼らに教え始められた。
すると、律法学者とパリサイ人が、姦淫の場で捕らえられた女を連れて来て、真ん中に立たせ、
イエスに言った。「先生、この女は姦淫の現場で捕らえられました。
モーセは律法の中で、こういう女を石打ちにするよう私たちに命じています。あなたは何と言われますか。」
彼らはイエスを告発する理由を得ようと、イエスを試みてこう言ったのであった。だが、イエスは身をかがめて、指で地面に何か書いておられた。
しかし、彼らが問い続けるので、イエスは身を起こして言われた。「あなたがたの中で罪のない者が、まずこの人に石を投げなさい。」
そしてイエスは、再び身をかがめて、地面に何かを書き続けられた。
彼らはそれを聞くと、年長者たちから始まり、一人、また一人と去って行き、真ん中にいた女とともに、イエスだけが残された。
イエスは身を起こして、彼女に言われた。「女の人よ、彼らはどこにいますか。だれもあなたにさばきを下さなかったのですか。」
彼女は言った。「はい、主よ。だれも。」イエスは言われた。「わたしもあなたにさばきを下さない。行きなさい。これからは、決して罪を犯してはなりません。」
物語の背景
律法学者とパリサイ人は、当時の宗教的な指導者たちでした。
不倫をしている現場で女性をとらえて、イエス様のところに連れてきたのです。
旧約聖書の律法では、このような場合、この女性は石打ちによる死刑とされることになっていました。
彼らの目的はイエス様を告発することでした。
イエス様は罪を赦すお方でしたので、この律法に反することをするのではないかと考えたのです。
赦しとは何か
このストーリーをカウンセリングのクライアントさんの状況に当てはめるとどうなるかということ、そしてイエス様の言葉と態度から、赦しとは何なのかを見ていきましょう。
赦しとは、相手がした罪をなかったことにすることではありません。
軽く見たりすることでもありません。
そして復讐したり罰を与えたりすることをしないということです。
石で打ち殺すということをしなかったのです。
赦しとは、相手の人間としての価値を認めることです。
そして新しいスタートの可能性を信じることなのです。
罪を軽く見ることではない
イエス様は、「いやいやそんなこと別に良いんだよ」「彼女を去らせてあげなさい」とは言いませんでした。
彼女がしたことをしっかりと受け止めておられます。
夫を裏切って他の男性に身を任せた、聖書の女性は罪を犯しました。
それは軽いことではありません。
あなたを傷つけた夫の浮気や不倫は、「そんなの誰でもやることだから」とか、「男性だから仕方ない」ということではないのです。
あなたはそれで傷ついています。
夫もそれを知る必要があります。
裁かないという選択
しかし同時に、イエス様はさばきを下さないと言われます。
これが赦しなのです。
裁きを下さない、罰しないと言われるのです。
やり返さないと言ってもよいでしょう。
「行きなさい」と彼女に言われたことで、あなたは生きていてよいのだ、あなたには価値があるのだということを、この言葉から聞き取ることができます。
新しい人生への期待
そして「これからは」と言われます。
彼女のこれからの人生に対して、「決して罪を犯してはなりません」と語られます。
新しい歩みを期待しておられるのです。
聖書的に言えば、悔い改めを期待しているということです。
このイエス様と、姦淫の現場でとらえられた女との関わりを見るときに、段階的な赦しのプロセスを見ることができます。
段階的な赦しのプロセス
第一段階:現実を受け入れる
起こったことを否定せずに現実を受け入れるということです。
痛みを認めることです。
ものすごいひどいことをされたのだという事実を認めます。
そして夫もひどいことをしてしまったのだということを認めます。
起こったことをなかったことにするのではなくて、痛みを認めるのです。
第二段階:怒りを手放す
復讐心や恨みを持ち続けることをやめるということです。
イエス様は石を投げることをせず、裁きを下さないと言われました。
私たちもまた、相手を罰し続けることから自由になる必要があります。
第三段階:相手を一人の人間として見つめる
人間を理解するということです。
人間というのは罪深い存在であり、自己中心の罪に支配されやすい存在です。
自分のことしか考えていないというのが、私たちの現実なのです。
「あなたがたの中で罪のない者が、まずこの人に石を投げなさい」という言葉で、自分も罪人であるということ、そして相手も罪人であるということを認めるのです。
同時に、罪を持っているけれど、自分には価値があるように、彼にも罪を犯したけれど、人間として尊いのだということを認めることになります。
第四段階:未来への希望を持つ
人は変わることができるのです。
その可能性を信じるということです。
「これからは」「これからは」とイエス様は言われました。
私たちにはこれからがあります。
夫にもこれからがあるのです。
過去と同じように生きなくてよいのです。
変わることができるのです。
それが私たちに対する神様の恵みなのです。
罰でここで彼女の命を終わらせるのではなくて、生きてほしい、罪を悔い改めて生きようと言ってくださる神様がおられる、イエス様がおられるということなのです。
信頼回復への現実的なステップ
質問の中に「どうすれば赦して、どうすればまた信じられますか」とありました。
また信じるというのが、信頼回復への現実的なステップです。
赦すことと信じることは別のプロセス
赦すということと信じるということは別々のことです。
別々のプロセスと言ってよいでしょう。
信頼を回復して夫婦関係を修復するためには、一歩一歩ステップを踏んでいく必要があります。
これは2人のことですので、夫とあなた、2人が一緒に取り組むことになります。
夫が開き直ってしまうと、修復や、もう一度彼を信じるということは難しくなります。
この女性の反応を見ると、「はい、主よ。だれも」と言っています。
この言葉から、彼女がどんな気持ちだったのかを読み取ることができます。
自分のしたことがひどいことだと彼女は思ったんだろうと考えられます。
そしてもう二度としないと思っていたのだろうと、私たちはここから読み取ることができるのです。
夫に求められることと、あなた自身が踏んでいくステップやプロセスがありますので、それを見ていきましょう。
夫に求められること
心からの謝罪と責任の受け入れ
「私は罪を犯しました。私はあなたを傷つけました。私はあなたを苦しめました。それはやってはいけないことでした。本当にごめんなさい。赦してください。」
この態度が必要です。
具体的な行動の変化
変わるということです。
それは場合によっては、携帯電話のロックをかけないとか、暗証番号を教えていつでも見てよいと言うことかもしれません。
もしくはGPSをつけてもよいと言うことかもしれません。
それがよいということではありませんが、そこまで徹底して自分が変わるということを決意しているということです。
透明性を高める
隠し事をしない生活です。
あなたが安心できるようにするのです。
例えば、私はカウンセリングという仕事をしているので女性のクライアントさんと2人きりで貸し会議室にいることがあります。
当然貸し会議室はモニターなどがあり厳密な意味では密室ではありませんが、それを第三者が見たら何かおかしいと思うでしょう。
それを妻が知らず、第三者から「知らない女性と歩いていたよ」聞いたら、妻に恥をかかせることになると私は思っています。
だから「今日は4時から新横浜で女性のクライアントさんとカウンセリングだよ」ということを毎回言うのです。
それは完全な透明性です。
全く隠し事がないので、手帳を見られても大丈夫です。
不倫をした、浮気をしたということは、隠し事をしていましたので、夫があなたを大切に思うなら、透明性を上げるということです。
「僕、全部君のものだから。僕のプライバシーはなくていいよ。」
ということです。
それを積極的にするということです。
あなたがそれを拒んでもよいのです。
「いや、私はあなたを追いかけたくない」と言ってもよいのです。
むしろそうした方がよいのですが、「あなたを信頼しているからGPSはつけない」、もしくは「スマホのロックも別に教えなくて大丈夫だよ」と言ってあげる必要があります。
継続的な努力
夫があなたを愛するという意味で、あなたのために時間を作り、あなたのために配慮をし、あなたとの信頼関係を築いていく必要があります。
これは小さなことの積み重ねです。
小さな約束を守る、小さな期待を裏切らないということです。
3匹の子豚の3匹目が、レンガで家を築いていくようなものです。
信頼関係というのは1個のレンガを積んで、もう1個のレンガを積んで、そうやってレンガを積んでいくように、ゆっくり時間をかけて、しかし長い時間をかけて、しっかりとしたものを築いていくことになります。
藁で作った家は狼に吹き飛ばされました。
木で作った家も燃やされました。
しかし一個一個しっかりとしたレンガを積み上げた家は狼の攻撃に耐えるのです。
そのようにしっかりとした信頼関係の回復を一生かけて作っていくのです。
時間がかかってよいのです。
このようなことを夫側がする、このプロセスを一歩一歩踏んでいく必要があるのです。
もう一度確認のために整理します。
夫がしなければならないことは、
心からの謝罪と責任の受け入れです。
そして具体的な行動の変化。
透明性を保つ、透明性を妻に提供するということです。
そして継続的な努力、約束を守る、期待を裏切らない。
ということを一生涯かけてやっていくことになります。
あなた自身が踏んでいくステップ
感情を整理する時間を持つ
赦せなくて苦しんでいますので、これを整理する必要があります。
「ああ、私本当に苦しかったんだ」とか、「ああ、私こういうふうに苦しんできたんだ」ということを、しっかりと整理していく必要があるのです。
責任の所在を明確にする
大切なことです。
何があなたの責任で、何が彼の責任だったのか、これをちゃんと分けるということです。
例えばこの不倫に関して言えば、あなたが夫との性的な夫婦関係を拒んでいた、夫のアプローチを拒んでいたということも、もしかしたらあるかもしれません。
性的な関わりを持つことは夫婦の必要なライフラインの一つですので、それを拒むのではなくて、受け入れていくということが大切なのです。
拒んでしまって彼に寂しい思いをさせたということは、あなたの責任です。
そこはあなたが悔い改める必要があります。
あなたが責任を取る必要があるのです。
しかし他の女性と関係を作って、性的な関係を持ったというのは彼の罪です。
あなたの罪ではありません。
あなたが不倫を犯したわけではないのです。
別の例をあげてみます。
会社の経営者が十分な給与を与えておらず、経済的に苦しかったとします。
経済的に苦しい思いをさせたというのは、経営者側の従業員に対する責任です。
給与を上げたりしてあげないといけません。
だけどこの従業員が会社のものを盗んだとしたら、ものを盗むということはこの従業員の罪です。
それは別々にしないといけないのです。
そのようにあなた自身の罪と相手の罪を分けるということです。
サポートを得る
不倫をされるとかモラハラ発言をされるという、ものすごく自尊心が傷つけられていますので、そこをサポートしてくれる存在が必要です。
教会に行ってみることや、聖書を読むことも助けになります。
何かしらのサポートを受けることが大切です。
小さな変化を認識して評価する
あなた自身が、感情を整理したり、自分の責任と相手の責任としっかり分けていったり、そしてサポートをもらいながら、自分自身が妻として変わる、成長していくということに取り組んでいきます。
そうすると一人の女性として、一人の人間として成長していきます。
何もかもがダメなわけではありません。
一人の人として変わっていくことができるのです。
イエス様の言葉を借りれば、「これから」、あなたの「これから」というものを一歩一歩大切にしながら、先ほど夫がレンガを積んでいくということがありましたが、あなたもこの一歩一歩前に進んでいくということに取り組んでいくのです。
イエス・キリストの赦しと癒しの物語が教えていること
どんな人でも変わることができる
神様は私たち人間に絶望されないのです。
どんな人も変わることができます。
そして過去の失敗は未来を決定しないということです。
過去の失敗、過去の罪は未来を決定しません。
聖書の中にはこれだけではなく、ダビデ王という有名な王様が不倫の罪を犯したという出来事も記録されています。
変わることができるのです、人は。
赦すことは自由をもたらす
人を赦すということは、石を握って去っていったパリサイ人や律法学者たちは自由になっているのです。
赦せないと思って殺したいと思っていた、その石を手放したからです。
赦すことは、あなた自身が自由を経験するということができるのです。
聖書の中では赦すということの大切さがたくさん語られています。
愛と赦しと恵みは人を変える力がある
イエス様の示された愛、赦し、恵みは、パリサイ人たちがやろうとした厳しい裁きよりも、人を変える力があるということです。
信頼されると人はその信頼に応えたいと願うようになるのです。
赦されると、もうこれをしたくない、もう傷つけたくないというふうに思うようになります。
実践的なアドバイス
赦しは毎日の選択
赦しというのは一度の決断ではなくて、毎日の選択です。
赦せない思いとか傷ついた思いが毎日出てくると思います。
気持ち的には、浮気発覚もしくはモラハラを受けて直後は、気持ちがアップダウンで、本当に大波に揺られているような状態だと思います。
しかし毎回赦すということを選択していくのです。
信頼回復には時間がかかる
信頼できるようになるまでには時間がかかります。
ある意味一生かかっても、完全には回復できないと言ってよいでしょう。
しかし信頼を少しずつ回復していくことはできるのです。
サポートを見つける
サポートしてくれる人を見つけてください。
助けてくれる人、本当の意味であなたを支えてくれる人を見つけていただきたいのです。
本当の意味であなたをサポートしてくれる人、支えてくれる人を見つけてください。
夫婦で一緒に努力する意思を確認する
これは重要なことですが、夫婦で一緒に努力する意思があるかどうかを、夫に確認してください。
そうでなければあなた一人で、この信頼関係を回復していくとか、夫婦関係を回復していくことはできないのです。
その時は厳しいことかもしれませんが、それを断念しなければならないということも出てくると思います。
そのようないろいろな難しい決断とか、そういうところを一緒に歩むためのサポートが必要です。
私のカウンセリングに申し込んで頂ければサポートしますし、何かしらのサポートを受けていただきたいのです。
希望を持って歩む
苦しいところを通って立ち直っていく人たちを沢山見てきました。
「もうダメだ」、「もう無理だ」と思う、でもそのようなところを通りながら、回復していく人たちを、私は一緒にその苦しいところを歩ませていただいてきました。
本当に時間がかかっても、「やってよかった」、「後悔がない」、そういうところをあなたにも歩んでいただきたいと願っています。
あなたのご夫婦の関係が幸せになることを心から願っています。
筆者プロフィール

- ひゅうが よういち
-
夫婦関係修復カウンセラー。
2010年から500組以上の夫婦の相談、離婚の危機にあるご夫婦のカウンセリングを手がける。聖書を基盤とした本質的な夫婦関係修復法を提供し、多くの夫婦の関係再構築を支援している。
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